コミティア124の振り返り/気づいてくれる人たち
先日5月5日のコミティア124で「すいかとかのたね」のブースにいらした方々、買ってくれた方々、本当にありがとうございました。
新刊5号を発行して、久々に力の入った活動をしたので少しはみなさんの目にとまることもあったかもしれません。今後も通販などで5号は売っていきますので、よろしくお願いいたします。
さて、コミティアで感じるあきらめと喜びの話をちょっと書いておきます。
作った雑誌の販売について考えるとき、僕らのなかでいつも話題にあがるのが、「自分たちにとってコミティアはホームなのか」ということです。
コミティアに出る時はいつも「売れてやるぞ〜」という気持ちでいるのだが、帰りにはいつも「ここでは我々は浮いている…」という気持ちになっている。
今回の帰り道でも、当日のブースでもらった嬉しい感想について話したあと、自分たちがなぜ浮いているのかを話しながら打ち上げへと向かいました。
今回は4号・5号・別冊合わせて50冊弱くらい売れて、1000円近い冊子の売り上げとしてはまずまずだと思うものの、本当はもっと売るつもりでいました。
そのために宣伝をし(ツイッターでうるさく感じた人すみません)、ブースの設営のシミュレーションもし、木版の手刷りで紙袋を作り、どうやったらあの場にいる人たちに響くのかを考えながら、自分たちなりに寄せていこうとしていたのです。
もちろん、その前提として本自体はいいものになったと思っています。ありがたいことに、嬉しい感想もいただきましたし、そこには少し自信もありました。
ただ、どっか諦めの気持ちもあって、(コミティアに出ている多くの人があの場の空気をどう感じているのかわからないけれど)僕はいつも、コミティアと自分との間には埋めがたい溝があるような気で準備したり売ったりしています。嫌いとかでは全然なく。
そのうえで、コミティアに来ている人のなかにまだ「届けば響くはずの人」がいると思っているので、本の内容は変えずにその人たちに届けたいという気持ちでいます。
しかしやってみて思うけれど、そのへんはかなり不器用ですね。
宣伝をしていても、ブースに座ってみても、あまり思ったような反応は得られない。きっともっとうまいやり方があるのでしょう…。
ある時からは、コミティア以外のフィールドも探していくという方向に目が向くようになっているので、今後はコミティアの他にも自分たちが面白くやれるところを見つけたいなーと思っています。
そんな感じの一方で、届くべくして届いた人のなかには、コミティアで知って全号買ってくれている人や、1冊を何度も読んでくれた人なんかもいて、作ってよかったと、自分たちが肯定されたような気になります。今回も、何人かの方々からそういった反応がもらえたことは本当によかった。
そのなかで、少し驚くようなことがあったので記録しておこうと思い、このブログに書くことにしました。
それは、『ゆうとぴあグラス』という合同漫画雑誌のブースに僕が5号を持って行った時のことです。
『ゆうとぴあグラス』は1〜2年くらい前のコミティアの時に知りました。漫画のクオリティが高くて良くて、好きな雑誌です。そして、コミティアにおいて自分たちとの共通点みたいなものを(勝手ながら)感じている、数少ないサークルでもありました。
今回は7号が出るということで、あらかじめ買おうと思っていましたし、せっかくだから交流できたらいいなという感じで僕らの新刊を持っていくことにしました。
(書き忘れないように)『ゆうとぴあグラス』7号、かなりよかったです。
ブースには、今回の7号に参加している作家の5人中4人が揃っていました。その中で、黒木雅巳さんと森田るいさんと主に話しました。
雑誌の中でも僕は二人の漫画がとくに好きで、特に森田さんの、去年発売した傑作『我らコンタクティ』(講談社)に感激していた身としては、本人に会えた喜びもひとしおでした。
黒木さんは我々の存在自体は知ってくれていていましたが、こういうちゃんとした人たちから見たら我々は結構しゃらくさいよな、となぜか卑屈になってしまうところもあって…なのでマジで持って行って話せてよかった!
それはともかく、お二人に5号を見せた時に「1000円じゃ安いよ!」という反応をもらったのが僕としては驚きでした。
なぜならそれは自分たちでも考えていたことだったから〜…!!
ホントは利益がほとんどなくなってしまう価格設定ですが、高いと思われることの方が断然多いと思います(そもそもコミティアの多くの冊子が労力のわりに安すぎるという背景もありますが)。
なのに森田さんが言ってくれた「1200円でも買う」という言葉なんて、本当に額もそのまま、作っているときに「このくらいで売れるものを作ろう!」と設定していた金額でした。すごい。
その後も、ブースに来てくれたお二人がすさまじかった。ブースを褒めてくれ、4号の小口と表紙のスプレーに気づいてその手間をねぎらってくれ、コミティア用に用意した紙袋を褒めてくれ、さらには4号と5号を買ってくれて、とにかく、そのあまりにかゆいところに手が届く言葉の数々に触れて、ほぼ絶頂に達していました…。
こちらから言うでもなく、瞬時に次々と気づいてコメントしてくれるお二人を見て思ったのは、この人たちと自分たちとは、似た文脈を共有しているのだな、ということでした。それはコミティアのブースに座っていると、なぜかなかなか感じられなかった感覚でした。
自分たちがこだわっているところや、自分たちが好きだと感じている良さに気づいてもらえる。それはかなり嬉しいことです。
すいかとかのたねは、少し時間をかけて、あるいは体力を使って向き合ってもらわないとわかりづらいものなのかもしれないとは思ってます。いつも悩む本の装丁部分も、あの場では好まれづらい文脈のものなのかも…とかも思ったり。今後もクオリティは上げていきたいですが。
今回も、やっぱ響かね〜!というフラストレーションは多々ありましたが、それでも、やっぱ見てくれる人いた!という喜びを持ち帰れたので、今後の制作の励みにしたいと思います。
ということでありがとうございました〜!
自分らの宣伝に使ってしまったようなのも悪いので、『ゆうとぴあグラス』を強くおすすめしておきます。面白いです。
それからこちらは森田るいさんの素晴らしい漫画『我らコンテクティ』について、中山の個人ブログに載せた文章ですが、もしかしたら読む人もいるかと考え、こちらにリンクを掲載します。
ではまた。通販もよろしくお願いします。