すいかとかのたね5号の中身(中村悠一郎について)
suikatokanotane.hatenablog.com
5月5日(土)のコミティアが明日にせまり、準備も一段落というところ。
5号は久しぶりに出したボリュームの大きい冊子なこともあって、宣伝に力が入りすぎている節もあるものの、手にとって読んでもらえればその良さが伝わるものができたと思っている。
理想としては、この雑誌を読んだ人が、自分も何かを作りたいと思ってくれるものになっていると、この上なく嬉しいっす。
さて、ツイッターで行なっている漫画紹介の補足と、そこでは扱わなかったページについてのちょっとした紹介をしたいと思っている。
中村悠一郎『micronesia』
肩書きとしては「ガチャガチャ作家」。大学院で彫刻を学びながらガチャガチャを作品として作っている。
2014年から武蔵野美大の芸術祭に出していた「しょうもないガチャ」は連日売り切れるほどの人気で、彼はこの制作で確実に人としての面白さのステージが上がってしまったと思う…。そのくらい面白くて広がりのあるものだった。
ガチャガチャの商品として作り始めた彼の作品は、100円ショップや東急ハンズで集めた素材を使った、手のひらサイズのもの。各素材の性質を生かしながら個性的な形を生み出していて、その作り方や見立てにも、彼にしかないユーモアがあってすごい。
そんな彼が5号で担当したページは、見開きいっぱいに作品を並べた写真ページ。
『ミッケ!』(小学館)の写真の小物が、もし全部自分の作品になったとしたら、という発想からこういった写真になったという。
彼の家にあった何百という作品の中で、いま気になるものや忘れかけていたもの、なぜ作ったか忘れたものなど、なんとなくいいと思ったものをチョイス。それらをランダムに散らして撮影されたのがこの写真らしい。
文章も付ける想定でいたものの、これらの小さい作品には、モチーフや名前がないことから、説明やストーリーをつけるのではなく、小さな言葉が作品の間に散らばっているという形になったのだとか。
文章は、5号に小説を寄稿している槙元伶によるツイートの抜粋。なんてことないテキストの方が面白いものになるのでは、という中村の判断から、槇元が自分のツイートから選んだテキストが使われている。
「文章と作品に関係性がない」ということが中村にとっては重要で、「一人で両方やっちゃうとどうしても答えになっちゃうから」ランダムな組み合わせで、「読者がそれぞれ自分で眺めながらなんとなくつながりを発見できたりするように」意図されている。
こんな感じ(これは拡大図)。
4号に収録されたしょうもないガチャのしょうもない広告
彼はすいかとかのたね2号と3号で『エデュケーション』という4コマ漫画作品を発表しているのだが、コンセプチュアルでかなり笑える漫画を作り出していて感動した。教科書の図版をサンプリングしながら、教科書の中にひそむ可笑しさや違和感を見事にあぶり出して、新たな価値付けがされている。非常によくできたパロディだと思う。
もう買えない号なのが残念だけど、コミティアでは既刊も読めるようにしておくので読んでもらえたらと思う。